アリセプト基本情報

認知症の中でも「アルツハイマー型」と「レビー小体型」と呼ばれるタイプの症状を軽減する治療薬です。

どちらのタイプの認知症も記憶や思考に関係するアセチルコリン系の神経の働きに障害が生じるという特徴があります。

この影響で思考力の低下、判断力の低下、物忘れが酷くなるなどの症状が起こります。

「レビー小体型」では上記症状に加えて幻視や運動障害も同時に起こりやすくなります。

「アリセプト」は神経伝達物質であるアセチルコリンの量を増加させ、アセチルコリン系神経の活性化を促します。

その結果として記憶障害を始めとする認知症の各種症状が軽減されます。

認知症にはアルツハイマー型とレビー小体型以外のタイプもありますが「アリセプト」の適用はこの二つのタイプの認知症となっています。

(薬理)

脳内ではアセチルコリンを分解する「アセチルコリンエステラーゼ」という酵素が存在していて、加齢とともにアセチルコリンの分泌量が減るとアセチルコリンエステラーゼの相対的な割合が増えてしまい、そのことが原因で認知症の症状が起こり始めます。

特にアセチルコリン系の神経障害によって発症するのが「アルツハイマー型」と「レビー小体型」なのでこの二つのタイプの認知症への治療効果が認められ厚生労働大臣の認可を受け認知症治療薬として広く使われるようになりました。

(特徴)

アルツハイマー型認知症の治療薬としては世界で初めて認可された薬です。

進行度が20〜30%程度の初期から中等度の認知症であれば進行を食い止める効果は高いとされています。

進行した認知症でも一定の効果は期待できるとされていますが、この場合は複数の認知症治療薬を合わせて処方するのが一般的となります。

レビー小体型への適応は2014年に正式に承認されました。

この薬は治療薬ですが症状を軽減させるための対症療法薬であり、根治させるための特効薬ではありません。

また認知症は進行型の病気なので、途中で服用を中止すると症状が進行してしまい、飲まなかった時の同等かそれ以上に悪化するリスクがあります。

服薬中止は医師の指示に従って行う様にしましょう。

処方対象が主に高齢者なので、服薬しやすいゼリー剤やドライシロップ、または水なしでも飲めるD剤(チュアブル剤)などの形状があります。

現在は貼り薬として皮膚から成分を浸透させる経皮吸収剤の研究・開発も進められています。

アルツハイマー型認知症について

日本には幾つかの認知症のタイプが確認されていますが、認知症全体のおよそ50%を占め女性に多いのが「アルツハイマー型認知症」です。

他には脳血管型認知症やレビー小体型認知症などがありますが、脳血管型認知症の患者数がほぼ横ばい状態なのに対し、アルツハイマー型は年々増加傾向にあり、国としても早急な対策が求められています。

アルツハイマー型の最大の特徴は「脳が萎縮していく進行性の病気」ということです。

つまり、何らかの原因で脳が次第に縮んでいき、放置していると萎縮がますます進んでしまうため進行を遅らせるための投薬治療は必須となります。

また早期発見、早期治療を行えば症状が軽い段階で対症療法が可能ですので、65歳を過ぎたら定期的に認知症の検査を受けることをお勧めします。

アルツハイマー型認知症には以下の様な症状があります。

  • 記憶障害:物忘れが酷くなり、数分前の出来事が思い出せなくなります。
  • 見当識障害:今日の日付が分からなくなったり、通い慣れた道でも迷ったりするようになります。
  • その他の症状として:大事なものを盗まれたと思い違いをしたり、徘徊癖がついたり、家族や自分の顔が識別できなくなるなどの症状が起こります。

また攻撃性が増すようになります。

レビー小体型認知症について

アルツハイマー型に次いで患者数が多く、こちらは男性に多いという特徴があります(男女比は2:1)。

1976年に日本の小阪憲司博士によって発見されました。

レビー小体という特殊なタンパク質によって神経伝達が阻害されてしまうことで起こる認知症です。

この物質は大脳皮質(ものを考えたり、認識したりする際の中枢的な役割をする組織)や脳幹(自律神経の中核となる重要な組織)に集中して神経細胞を破壊し脳の機能障害を引き起こす厄介な存在です。

レビー小体型ではアルツハイマーとよく似た症状を起こしますが、初期の段階では記憶障害(物忘れ)よりも幻視を頻繁に見る様になります。

よく見る幻視としては

  • 虫や蛇が部屋の中にいる
  • 知らない人がいる
  • 遠くにいるはずの子供が帰ってきている

などが多いようです。

こうした幻視は大脳皮質に異常を生じていることが原因ではないかと考えられています。

また上記以外にもパーキンソン病と同じ様な症状を起こす症例も多いと報告されています。

具体的には

  • 手足の震え
  • 動作が遅くなる
  • 筋肉のこわばり
  • 身体バランスが取りにくくなる
  • 小股でちょこちょこと動くようになる
  • 一旦動作が止まると次の動作に移りにくくなる
  • 表情が乏しくなる

などです。

さらに意識が清明な時とそうでは無い時とが交互に訪れながら進行していくという特徴があり、この場合はうつ病との識別診断が難しい所になります。

(実際にレビー小体型認知症ではうつ病を合併することがあります)

加えて寝ている時に急に暴れたり大声を出したりする「レム睡眠行動障害」と呼ばれる症状を起こすというのも特徴の一つになります。

副作用並びに禁忌など使用上の注意点について

(副作用として)

  • 消化器症状(特に飲み始めの時期に多い):吐き気、嘔吐、下痢、腹痛
  • レビー小体型認知症への投与時には一時的にパーキンソン病様症状が強くなる場合があります。

(重い副作用として):滅多にない副作用ですが、起こると深刻な健康被害をもたらす副作用のことです。

  • 徐脈、不整脈、動悸、脈が少なくなるなどの循環器症状
  • めまい、ふらつき、意識消失などの脳の障害
  • 胸が締め付けられるような痛み、呼吸障害などの呼吸器症状
  • 肝機能障害
  • 手足の震え、冷感、舌のもつれ、口周辺がモグモグと動くなどの神経障害

など
この様な症状以外にも身体への不調を覚えた時は速やかに処方医に相談するようにします。

(禁忌として)

アリセプトにアレルギー症状を示す、または過去にアレルギーを示したことの有る人(過敏症)には投与できません。

(その他の注意事項)

  • アレルギーや持病のある人は事前に医師に伝えておきます。
  • 現在投薬治療中の人は今飲んでいる薬を医師に伝えてください。

(薬の手帳を活用しましょう)

  • 心臓病、消化性潰瘍、気管支喘息、錐体外路障害(パーキンソン病など)などがある人は持病を悪化させる可能性があるので慎重な投与が必要です。
  • 胃薬(ベサコリン、ブスコパン、アボビスなど)、エリスロマイシン製剤(エリスロンなど)、抗真菌剤(イトリゾールなど)、抗生物質(クラリス、クラリシッドなど)、パーキンソン病治療薬(パーロデル)、イストラデフィリン(ノウリアスト)、抗コリン性パーキンソン病治療薬(アーテン)、トリモール、ペントナなどとの併用は慎重を要します。

医師の指示に従ってください。

ドネペジル塩酸塩は保険適用の治療用成分

アリセプト(主成分:ドネペジル塩酸塩)は認知症治療薬として国内でも厚生労働大臣の許認可を得ている医療用医薬品です。

したがって精神科や脳神経科で診察を受け、アルツハイマー型認知症かレビー小体型認知症の診断を受けると保険診療として3割負担(もしくは後期高齢者医療制度の負担金の範囲内)で入手できます。

実際の購入時には医師が発行する診断書に基づき調剤薬局で処方してもらうという流れになります。